主に蝶の写真を中心にアップします。

naoggio写真日記

         昨日の記事の後日談。
         イギリス館で彫刻家井上信道さんの事を思い出したので家に戻ってからネットで調べてみた。1909年の
         お生まれだから亡くなっていらっしゃるのは確かだろうがいつ亡くなられたのか気になったからだ。
         するとすぐに2008年に99歳で亡くなられていた事や、1997年には横浜三越で画家である奥様と二
         人展をされていた事などがわかった。
         長寿を全うされていた事を知りとても嬉しかった。そして神奈川新聞のネット記事(CLICK)で、2013
         年の時点ではまだ井上さんのアトリエが残っていた事もわかった。「関係者の間で保存の気運が高まった」
         という記事だったが、その後がどうなったのかまではわからなかった。


         さて、イギリス館を訪れてから4日後の木曜日、まだ明るいうちに帰宅したのでカメラを持って夕方の散歩
         に出掛けた。手にしたカメラはソニーのα7ⅡにLeitz Elmar 5cm f3.5 の組み合わせで、最初からモノクロモ
         ードにセッティングしておいた。

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         先日も登場した自宅近所の解体現場のユンボのアーム。近頃自宅付近では戸建て住宅の立て直しが非常に多
         い。それらの多くは老後の備えにアパートを建築するというケースだ。



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         数々の仕事をこなしているうちにこんな強かな表情を身につけたのだろう。



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         出掛けに井上信道さんのアトリエの事を思い出してその方向に足を向けてみた。私はアトリエにお邪魔した
         事はなかったのだが、ネットで見て「中丸」という所在地の町名だけは知っていた。この辺りには豪族の砦
         があったようなので中丸という地名もその名残かもしれない。
         だいぶ薄暗くなってはきたが捜真女学院の裏手に回り込んで行くと建て込んだ家々の中に鬱蒼とした樹々の
         残っている場所が見えてきたのでそちらに歩いて行ってみた。



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         樹木に絡み付いた蔦が面白くて写真を撮っていると何か違和感を覚えた。何かに見られているような、そん
         な気がしてファインダーから目を離して肉眼で樹を見てみると幹と幹の間から何かがこちらを見ている。
         ちょっとドキッとしながらもう一度よく見てみると・・・彫刻?



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         さらに樹の横には裸婦像の背中が見えているではないか。ひょっとして、ここが? そう思った。




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         垣根を回り込んでいってみると、そこに写真で見た事のある井上信道さんのアトリエがあった。ただ傷みは
         激しく、保存が軌道に乗ったという様子には到底見えなかった。




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         アトリエや母屋の周囲にはたくさんの彫刻が置かれていた。




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         井上さんは戦後個性的な外国人の顔に惹かれ、たくさんの外国人の頭像を作られたそうだ。




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         この女性像の膝には何か本が開いて置かれていた。モデルとなったどなたかと関連のある事なのだろうか?

         突然であったし、夕食前の時間帯だったので門戸を叩く事なく引き返してきたが、アトリエの中が今どうな
         っているのかは気になった。そのうちお声を掛けてみようかと思う一方で、見ない方が良いような気もして
         今も決めあぐねている。
         それはともかく、市内の随所に残されている井上さんの彫刻については、改めて拝見してみようと心に決め
         た。


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         横浜駅からみなとみらいにかけて高層ビルがたくさん立ち、この丘から眺める横浜の景色もずいぶん変わっ
         てしまった。都市の美化を訴え続けていたという井上さんだが、この横浜の街並の変遷をどう御覧になられ
         ていたのだろう。



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         2008年に亡くなられたという事は今から8年前。近所にこんな素晴らしい彫刻家がいながら、それを顧
         みず失念していた事がとても残念に思えた。
         今思えば反町駅で偶然出合った井上さんの「そうなんだよ、それが一生の問題なんだ。ぼくも同じなんだよ !
         」とおっしゃられたあの言葉は、父親が亡くなった数年後で不安に苛まれていた当時の私に大きな勇気を与
         えてくれたし、人生どうにかなるものだという希望も与えてくれたように思う。
         それなのにその後一度もご挨拶に伺わなかった原因の1つは、実は若い頃の私が、井上さんの作品の素晴ら
         しさを理解できていなかったという事かもしれない。もしも私が当時井上さんの作品にもっと魅力を感じて
         いたら、自分から進んで井上さんと近しい距離を保つ努力をしたのではないだろうか。

         イギリス館のエントランスの女性像を前にして、若い頃の自分の浅はかさを改めて思い知った気がした。
         もっと色々な事を井上さんからお聞きしたかった。けれども後悔先に立たず。私の人生は、まあそんな事だ
         らけだが、先日家内が書物だか新聞記事だかの中で誰かが「青春なんて若い奴にはもったいない」と言って
         いたと話してくれたのを思い出した。

         「青春なんて若い奴にはもったいない」

         つまり、そんな思いに駆られるのは私だけではないという事か。
         






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  1. 彫刻
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         時系列的には4月12日の記事(CLICK)、そして4月15日の記事(CLICK)の続きとなる。
         15日の記事の後半に出て来る室内写真は港の見える丘公園のイギリス館の中だが、その2階を見学してい
         たら少し離れた所にいた家内が「富之助(私の母方の祖父)の銅像作ったの誰だっけ」と言うので「信道
         (しんどう)さんだよ」と言いながら近寄ってみたら、丸窓の下に三体の頭像が置かれていて、その隣に井
         上信道さんの略歴等の書かれたパネルがイーゼルに載せて置いてあった。
         井上さん作の、横浜に縁の深かった外国人の方々の頭像を展示し、合わせて作者の紹介をしたという事らし
         い。
         彫刻家の井上信道(いのうえのぶみち)さんは京都府小倉出身の彫刻家で、長く横浜で活躍されていた。
         1928年に私の母校の前身である浅野総合中学校を卒業され1934年に東京美術学校を卒業されている。
         私が高校3年の時に文化祭で企画した在学生と卒業生による美術展覧会に作品を出品して下さり、この時初
         めてお目にかかる機会を得た。1974年の事だったと思うので、井上さんが65歳の時だ。
         お名前は本当は「のぶみち」と読むらしいのだが、私の周囲の多くの人は親しみを込めて「しんどうさん」
         と呼んでいた。
         実は昨日母親に聞いて初めて知ったのだが、私が面識を得る以前から私の家と井上家とは親交があったらし
         い。井上さんのお宅は私の自宅から徒歩5〜6分ほどの所にあって、私の母方の祖母と井上さんの義理のお
         姉さんが仲がよく、頻繁に行き来があったそうである。
         そんなご縁もあってか、税理士だった母方の祖父の胸像を作る話が横浜税理士会から持ち上がった時に井上
         さんが製作する事になった。ブロンズ像制作にあたってのデッサンのために、母は祖父に付き添って幾度も
         井上さんのアトリエにお邪魔したそうである。出来上がった胸像は長い事自宅に置かれていたので、私は御
         本人を知る以前から毎日井上さんの作品を見て暮らしていた訳だ。
         その胸像は、祖父が亡くなった時に岡崎市の料亭に婿入りしていた母の弟がさっさと持って行ってしまった
         ので、今は愛知県にあるはずである。

         井上さんとはほんの数回お目にかかっただけだが本当に素敵な方だった。40年ほど前、私が東横線反町駅
         のプラットフォームに立っていたら、井上さんが駅の階段を一段飛ばしで駆け上がって来られた。既に66
         〜67歳になられていたと思うのだが、目を瞠るような若々しい足取りだった。私を見つけると早速「その
         後どう?」とお聞きになるので「(絵具代稼ぎの)アルバイトが大変で」と答えると、我が意を得たりとい
         ったお顔になられ「そうなんだよ、それが一生の問題なんだ。ぼくも同じなんだよ ! 」と手振りを交えなが
         ら大きな声でおっしゃられたのが強く印象に残っている。この日はイタリア人の来客があるとかで、横浜に
         買い物に出る所だとおっしゃられていたが、ご自身からして外国人のような、長身痩躯でダンディーな風貌
         のとてもエネルギッシュな方であった。
         その後井上さんにはお目にかかる機会がなく、気がつけば40年が過ぎてしまった。


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         この説明パネルを見るとここにこれらの像が置かれたのは平成18年の事らしい。
         前回ここを訪れたのは2012年10月7日(CLICK)の記事の時、つまり平成24年だから、その時既に
         この展示はここにあった事になる。しかし全く記憶にない。我ながらどこに目を付けているのかと思うと情
         けなくなてしまった。
         


       160410em5P4101283.jpg
         イギリス館エントランスホールに置かれたこの立像も井上さんの作品である。
         極めて素朴な表現の中に、対象の人間性や仄かな感情の揺らぎを感じさせる作風。井上さんの作品を見てい
         るとどこか安らいだ気持ちになる。
         殊にこの像の何かを見つめる視線の奥に、聡明で素直な心の輝きを見るようで感じ入るものがあった。



         井上信道さんの作品は↓のweb ページで見られますので興味がおありの方は是非御覧下さい。

         井上信道の世界http://www.kanagawarc.org/inoue/inoue_n/index.html
         



         以下は4月10日、イギリス館に立ち寄った際撮影した未掲載画像。


         長い時間遊んでくれたヒオドシチョウ。



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         丘を下る外国人親子。



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         フランス山を行くカメラマンとモデルさん。



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         噴水脇のこの桜、種類はわからないが10日の時点で満開だった。




  1. 彫刻
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今日は以前に旅先で見かけた素晴らしい彫刻のお話です。
ヴェネツィアのサン・ポーロ地区にある「サンタ・マリア・グロリオーザ・ディ・フラーリ」教会。
長いので普通はフラーリ教会と呼ばれています。有名な教会なので訪れたことのある方も多いことでしょう。
多くの聖遺物や美術品を所蔵しています。
圧巻は何と言っても ティツィアーノ の聖母被昇天でしょう。これは、この絵の前に立ち感動に打ち震えたかのワグナーが、その場で「ニーベルングの指輪」の完成を心に誓った、という逸話とともに有名ですね。実際素晴らしい絵で私も感動しました。
それから アントニオ・カノーヴァの心臓が納められた、カノーヴァ自身の作となるピラミッドも、静謐で神秘的な美をたたえた傑作だと思います。これはウィーンにもほぼ同じものがあります。
他にも色々ありますが、今日記事にさせて頂きたいのは ドナテッロ の「洗礼者ヨハネ」です。
奥の方の中央から外れた祭壇の中にある小さな彫刻で、色も地味なので知らないと見過ごしてしまうかもしれないような彫刻です。
始めはふ~んと思って見ていましたが、しばらく見ているうちに、ドナテッロの驚くべき鑿の冴えが伝わってきました。襤褸を身にまとったヨハネの、極めて微妙な全身の重心の偏りや、上と下に向けられた腕と指の動きが見事に表現されています。そしてこの顔の表情・・・
少し離れた所を見つめるその目に、人間の抱く様々な心と、達観しているようで何かに怯えているような、余りにも繊細な光が宿っているのを見て、正直胸が高鳴りました。
イエスに洗礼を与えたヨハネではありますが、彼は飽くまで人間であって神ではありません。その微妙な違いを、ドナテッロはこの彫刻で見事に表現したように思いました。
私はかねてから彫刻における精神性の表現においては、西洋の彫刻より日本の彫刻の方が上手だと思ってきました。今もそれに変わりはありませんが、時々これは・・・という西洋の彫刻を知る機会もあります。この「洗礼者ヨハネ」も間違いなくその一つです。

ヨハネ1


ヨハネ2

1、2枚目とも撮影は2007年1月です

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naoggio

Author:naoggio
青山学院の近くで、オーダー家具のショップをやっています。
このブログでは仕事と関係ない趣味の写真を中心に、日々の出来ごとや思い出など書いて行こうと思います。
家具に興味をお持ちの方は、リンクトップの「order furniture standards」の方にも、是非遊びにいらして下さい。

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